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九条静音の黒執事妄想劇場
セバスチャンxシエルのBL中心の日記です。九条静音の黒執事個人誌の紹介もあります。その他ネタバレの配慮は致して居りませんので、ご注意18禁有り
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「過去からの呼び声 第一章 出会い」
 やっと、第一章 「出会い」書き上がりました♥
 TLで書こうか呟いて、死渡幻夢様に楽しみにして頂きましたので、図に乗って書いてしまいました(>_<)
 死渡幻夢様だけお持ち帰り下さい。
 アニメⅡ期ラスト後、100年後のセバシエの運命は・・・
 捏造・妄想、親子関係、その他、モロモロの設定が目茶苦茶になっていますので、原作のイメージを大切にしたいお嬢様はご覧になりません様に・・・
 過去のシエルが女体で、セバスチャンは悪魔以外の人外です。
 まだ登場人物の本当の正体は明らかにしていませんが、少しでもお楽しみくだされば幸いです。
 基本「セバシエ」
 ですので、読んでもいいよと言う方だけの閲覧お願い致します。
 閲覧後の苦情はお受け致しかねますので、ご了承くださいませ。
 三部で終わりたいすね。
 次回「第二章 運命」
 ラスト「第三章 現在」の予定です。
 それでは、御心の広いお嬢様だけどうぞ♥
 「過去からの呼び声」
 ギシッギシッ・・・ベッドが激しく揺れる。
 悪魔になったシエルを抱くのに、セバスチャンが遠慮しなくなったからだった。
 「くっ・・・シエルそんなに締めたら・・・」
 「そんな事・・・ああ・・・んっ・・・早く、中に・・・」
 ビュ・・・ビュクッ・・・
 セバスチャンは呆気なくシエルの内部に、情熱のたけを放ってしまっていた。
 力なくシエルに倒れ込むが、シエルに全身を投げ出して、潰そうとはせずに、すんでの所で手で自身の体重を支え、セバスチャンはシエルに口付ける。
 チュッ・・・チュッ・・・小鳥が啄む様に軽いキス。
 「もう、僕は悪魔になったんだ。遠慮しなくていいのに・・・」
 もう二人だけで100年は暮らしている。
 以前の様に、只の主従でいる必要などないのだ。
 「女王の番犬」でいる必要がない為、いつしか以前より甘い関係になっていた。
 シエルが悪魔になったすぐは、セバスチャンはどんよりと暗い顔だったのだが・・・
 「例えそうではありましても、私は執事です。永遠にね・・・」
 嫌味を言う所は、100年過ぎても変わらない。
 「もう、寝る!」
 子供な恋人はすぐ不貞腐れる。
 「ええ、私も一緒に・・・」
 シエルは人の魂を食べたがらない。
 元人間だからではない。
 人間に凌辱されていたからだ。
 二人はお互いの精気を喰らい、生き続けている。
 どれ程、精液で穢れ様とも、肌から吸収し、悪魔としての魔力の元に変換出来るから、一々入浴する必要もなかった。
 人間の肉を喰らい、血を飲めば、もっと効率が良いのだか、シエルが良しとしない。
 二人で肌を寄せあい、全裸で眠るのが、日課となっていた。
 まだ、秘所は繋がったままだったが、シエルの命令がないので、セバスチャンは好きな様にしていた。
 ハンナとクロードにシエルを奪われた恐怖から、セバスチャンは完全に回復している訳ではないのだ。
 いつも不安が付きまとう。
 それ故、自分達に誘れる過去に気付かない。
 何故、自分達が離れられないのか・・・
 二人は運命の渦に巻き込まれる未来を知らない。
 只、恋人の肌を感じ、穏やかに眠るだけ・・・
「第一章 出会い」
 セバスチャンもシエルも只、眠り続けた。
 その方が、魂を喰らわなくても、無駄な魔力を消耗する事なく、お互いの精気だけで、生きていられるからだ。
 もう、離れない、離さない・・・
 過ぎた執着は、お互いを縛り付ける。
 二人は繋がったまま、抱き合ったまま、同じ夢に翻弄される事になる。

 「さぁ・・・いい加減にしないと、酷い目に遭うぞ!」
 一人の眉目秀麗な青年が目の前の16歳くらいの少年に声をかける。
 しかし、少年は一向にその行為を止めようとしなかった。
 青年がウンザリして、溜息をついた瞬間、それは起こった。
 「危ない!」
 青年は少年を抱え、済んでの所で、危険を回避する。
 「あら?残念、二匹まとめて、仕末出来る筈だったのに・・・」
さも、残念と言う顔の少女も16歳くらいだろう?
「ご挨拶ですね?貴族のご令嬢が男に行き成り剣で斬りかかる何て、下品にも程がありますよ?」
 青年は不快を露わにする。
 「よっく言うわね?人外のくせに!その女性を襲ったくせに、このヴァンパイア!」
 そう行為とは、吸血行為の事。
 16歳の少年は、女性の首筋から、血を吸っていたのだ。
 「それが何だと言うのです?貴方達人間だとて、エサとして獣を喰らうでしょう?我々にとって人間はエサでしかないのですよ?そんな事も御解りになれない方が、よくヴァンパイアハンターなど、やっていられますね?」
  目の前の青年は、少女をあざ笑う。
 「フフ・・・貴方中々、おもしろいじゃない?いつまですました顔していられるかしら?」
  少女も負けてはいない。
  ヴァンパイアは狩るだけなのだから・・・
  少女は双振りの剣で、青年を攻め立てた。
  青年は少年を建物の影に隠し、少女との間合いを取り、果敢に攻める少女を難なくかわす。
  剣の腕に自信はあるものの、青年の素早さにはついていけそうもない。
  それでも、そこで立ち止まるのは、死を意味する。
 「どうしました?減らず口だけは、一人前の様でしたが・・・」
 「流石は、ヴァンパイアね・・・この手は使いたくなかったんだけどシルバー!」
 少女が一言言葉を発すると、銀髪の長い髪をリボンで結んだ長身の男が現れる。
 「お嬢様、御呼びですか?」
 「それは・・・」
 青年の顔色が僅かに青ざめた。
 「ライカン・・・狼男ですか・・・フゥ、とんだ獣を飼っていらっしゃる。可愛いお顔で中々のあばずれですか?」
 「お嬢様に無礼な!ヴァンパイアだから、遠慮はしないでいいな、全力で行かせて貰おう!」
 言うが早いか、シルバーは人間体のままで、青年に突進する。
 いくらヴァンパイアが不死身とは言え、力ではライカンに叶う訳がない。
 「くっ・・・そのままの姿での馬鹿力・・・王族ですか・・・」
 青年の端正な顔が歪む。
 ヴァンパイアと同じ様に、ライカンがどうやって誕生したかは解らない。
 只、どちらの種族も人間の王族が、呪いによるものなのかは、不明だが、突然変異したものらしく、王族の血を継ぐモノは、圧倒的な力を有する。
 血を吸われ、主となったヴァンパイアが望んだ者のみ、同族となり、ヴァンパイアとして、傍に仕える事を許される。
 ヴァンパイアに取っては、人間など、主食である血を与える家畜に過ぎない存在。
 ライカンはヴァンパイアとは敵対関係にあった。
 同じ様に、人間を糧とするのには、違いない存在だが、元はオオカミと人間との間の子供が存在して、ライカンになったとされる説もあった。
 青年はヴァンパイアではあるが、多少、事情があり完全な王族ではなかった。
 しかし、少女が連れているシルバーと言うライカンは、生粋の王族の血を引くモノであった。
 「仕方ないですね、ここは引きましょう・・・ヴァンパイアハンター・・・ファントムハイヴ伯爵令嬢貴女は、私の名をご存知なのでしょう?」
 「ええ・・・何度か舞踏会とか夜会でお会いしてますもの・・・セバスチャン・ミカエリス公爵様・・・貴方がヴァンパイアとはね・・・まぁ、それ程の美貌は、らしいと言えるでしょうけど・・・」
 「貴女の様に、美しい方にお褒め頂き、光栄です。シエル嬢貴女を私の城へお招き致しましょう・・・私は美しいモノが大好きですから」
 青年はセバスチャンと言い、表向き公爵の爵位を持つ。
 「まぁ、貴方のお城にお招き頂けるとは・・・そこで貴方と再び戦って宜しくて?」
 「そんな無粋な事はなさらないで頂きたいですがね。只、一度貴女とダンスさせて下さっても宜しいでしょう?私達は、戦う運命にあるのでしょうが、これはゲームですよ。どちらが相手をよりやり込められるか、試してみませんか?」
 「お嬢様いけません。これは罠ですよ。奴の城などへ行ってはなりませんよ。」
 シルバーがシエルを制す。
 シエルはゲームと言われるモノに負けた事がない。
 女性でありながら、ゲームの天才と称され、探偵の真似ごとなどもして、シルバーを困らせている。
 「ご心配なら、貴方もご招待しましょう。私の正体を知りながら、見逃しているとは。シエル嬢貴女も中々の曲者だ。人知れず、陰で私を仕留める事すら容易いでしょうに・・・酔狂な・・・」
 そうセバスチャンを殺すだけなら、十字架を使い、動きを封じ、銀の弾丸を拳銃の弾にして、打ち込めば、少しの間動きを止める事すら可能だ。
 但し、それはライカンを確実に仕留める方法でもある。
 ヴァンパイアは、心臓を杭か何かで貫き、首を切り落とし、命の糧である血を完全に抜き取り、ミイラと化した所を燃やし、灰にしなければ、完全に死滅しないのだ。
 只、ミイラにしても、血を一滴でも与えてしまえば、たちどころに蘇る。
 力はライカンに遠く及ばないとしても、人間など、捻り潰す事さえ可能。
 本気を出していれば、シエルなど、とっくに殺していた筈なのだ。
 「いいのよシルバーこの方は私を殺したりなどなさらない。面白いわ、心配なら貴方もいらっしゃい。私はゲームと名の付くモノに負けた事ないのは、貴方も知っているでしょう?楽しみだわ、どんなお持て成しして下さるのか楽しみで」
 シエルは目を輝かしている。
 シルバーは諦めるしかなかった。
 シエルがこの顔をしている時は、ゲームを楽しもうとしている時。
 シルバーは自分の素姓を知らなかった。
 いつから生きていて、誰が自分の親なのかも・・・
 只、オリの中にいて、シエルの父に買い取られた事だけは覚えていた。
 ヴァンパイアハンターだけあって、シエルの父の伯爵も、相手の正体を見破る能力に優れていた。
 普段は温厚で、それ程、頭の切れる人物と想わせないのが、彼の特徴だ。
 「それでは、商談成立と行きましょうか?明日、私の城への案内図など同封した招待状をお届けしましょう。朝早く届けさせますので、お昼にいらして下さいますか?」
 シエルは怪訝な顔をする。
 「貴方、ヴァンパイアでしょう?お昼では棺の中にしかいられないのでは?」
 「いいえ、私は純血種ではありませんので、夜だけ活動する必要はありません。あまり血を吸う必要もね・・・」
 「まさか貴方はダンピール?人間とヴァンパイアの混血種だとでも言うの?」
 
「ええ、私の母は人間でしたよ。父は獲物としてではなく、母を女性として見て、愛してくれてましたよ。もう二人とも亡くなりましたが・・・」
 「つっ・・・」
 シエルは言葉を詰まらせた。
両親を亡くしたダンピール・・・理由には触れてはいけない気がした。
 「それでは、貴方からのご招待をお待ち致しております。」
シエルはドレスの裾を持って、恭しくお辞儀すると、シルバーを伴い、さっさとその場から離れて行った。
「フフ・・・女性のハンターとは楽しませてくれますね。さぁ、帰りましょうか?」
セバスチャンも少年を伴い、城へ戻っていく。
少年の瞳に宿った光に気付く事もなく・・・

「フゥ・・・」
シエルはバスタブの中にいた。
「お嬢様どうしただか?」
家女中のメイリンが訪ねた。
「いえ、只、少し疲れただけよ。でも明日素敵な方のお城のランチに招待されるのよ。しっかり磨いてね。」
貴族の令嬢は16歳ともなれば、そろそろ結婚相手を確保しておかなければならない年齢だった。
その為、自分をアピールし、最適な貴族の子息の心を掴まなければならなかった。
大好きな薔薇の香りに包まれ、シエルはリラックスしていた。
女でありながら、ヴァンパイアハンターの家に生まれた以上、戦う宿命から逃れられない。
それでも、違う形で生きる道を探す事も諦めてはいない。
自分の命を駒として、戦い続ける宿命・・・運命に抗っても、人の身である以上、絶対はあり得ない。
大好きな父の為にも、亡くした母の為にも、生き続けるには、どんな手段でも使う。
それが、シエル・ファントムハイヴとして生まれた意味。
「ありがとうメイリン、もう上がるわ」
ザバァ・・・と滴を撒き散らし、シエルは風呂から上がり、メイリンに丁寧にバスタオルで拭かれ、バスローブを着せて貰い、丁寧に髪を乾かして貰っていた。
(明日は、ヴァンパイアの本拠地へ・・・)
違う決意を胸に秘め、全ての身支度を終えると寝室に移動する。
タイミングを計った様に、シルバーがホットミルクを運んできた。
シルバーは表向きはシエル付きの執事なのだ。
「ありがとうシルバー・・・今日は助けてくれてありがとう」
「いいえ、私は何もしておりませんよ。しかし、お嬢様、貴女はまさか・・・」
「そうね、貴方の想っているとおりよ・・・」
シエルはホットミルクを飲みながら言う。
「ですが、それでは・・・貴女は何処まで・・・」
シルバーは言葉が発せない。
執事である以上、主であるシエルとの契約は絶対。
「ええ・・・兄弟同然に育った貴方だけが、私の理解者ね。だから何でも話せた。貴方は私の兄の様な者ですもの。だったら約束通り、私がする事は只、黙って自由にさせて。これは私が決めた事ですもの」
「しかし、それでは貴女は自分を犠牲にするのですか?女性として只の貴族の子息に嫁ぐと言う手もあるのでは?」
「それでは駄目なのよ。誰がお父様を守るの?お母様が亡くなってから、お父様は必死で私を育てて下さったわ。いくら使用人達がいてくれたとしても、お父様と貴方以外で、そこまで私を愛してくれた訳ではないでしょう?私はお父様と貴方を守る為なら、どんな事でもするわ。明日は貴方が私を守ってくれるんでしょう?だったら、何も心配ないじゃない・・・さぁ、もう寝るわ、明日は戦いですもの・・・」
「ええ・・・お嬢様、私が貴方をお守り致しますよ。この命に代えても・・・」
「そんな悲しい事は言わないで・・・貴方は私のお兄様なのだから・・・」
シエルはシルバーの頬にチュッとキスし、カップをシルバーに渡して、シーツに包まる。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
シルバーは執事としての職務を果たす。
人外の身として怖れられ、手錠をされ、鎖に繋がれた子供の頃・・・
ある日、見世物として売られたサーカスに来た小さな少女。
5歳くらいのシエルは、青く大きな円らな瞳で、シルバーを欲しいと父親にダダを捏ねたのだ。
当時、シルバーには名がなかったが、シエルの余りの我儘に根負けした伯爵は、サーカスの団長から、高額な金貨で彼を買い取った。
何が起こっても責任は取らないとの条件付きだが・・・
シルバーはまだ当時は、ライカンとして目覚めてはおらず、まだ人の血も肉の味も知らなかったので、シエルを襲う事はなかった。
しかし、何時覚醒しても無理のない血筋であったらしいが、シエルとの契約とも言える約束に拘束され、満月の夜が近づくと、城の地下に結界を張り、鎖に繋がれ、変身する様にはなっていた。
シエルの父はヴァンパイアハンターでもあり、ありとあらゆる人外に対抗する術を身に付けた人外ハンターでもあったのだ。
何故、そんな能力が伯爵に備わっていたのかは、解らない。
元々の素質として優れていたのかも知れない。
人の身ではあり得ない事・・・自分の妻の死期すら、予知していたのだから・・・
妻が死に、男手一つで育て上げた宝・・・シエル。
シエルは想う。
父の為ならどんな事でもすると無茶をするシエルを、シルバーが止めようとするのは、無理からぬ事・・・しかし、立ち止まる事は許されぬ運命・・・ならば、自分に出来る事。
その為の手段は只一つなのだから・・・
(お母様・・・私を守って・・・)
シエルは母に祈る。
明日、生きて屋敷に戻れなければ、セバスチャンとのゲームは負けた事になる。
負ければ死あるのみ。
それならば勝つ道は一つだけ・・・
複雑な気持ちだが、シエルは眠らなければならない。
明日の勝利を掴む為に・・・
シルバーとシエルの心に影を落としたヴァンパイア、セバスチャン・ミカエリス・・・
彼の真意は何処にある?
様々な想いを胸に、それでも時間は過ぎて行く・・・
闇が支配し、人々は寝静まり、あっと言う間に朝は来る・・・

シャッ・・・カーテンを引き、シルバーが声を掛ける。
「おはようございます、お嬢様・・・」
シルバーはモーニングティーをシエルに用意すると、一緒に入室したメイリンに着替えを手伝う様に指示を出し、退出した。
シエルが子供であった時は、シルバーがシエルの世話をしていたが、如何に兄同然に育てられたとは言え、何時、人外の血が騒ぎ、シエルを生贄として、ライカンの能力に目覚めてはならぬと、シエルと接する事を極力少なくした配慮の為だった。
未だに、シエルは女性として、成長しきれていないので、まだ初潮すらなかった。
ヴァンパイア同様、処女の血で、ライカンの血が目覚めては、手に負えないので、幸運たったとも言える。
「では、お嬢様。御着替え致しますだ」
メイリンはネグリジェを脱がし、下着から着せつけていく。
コルセットで元々、細い腰を強調し、ピンク色のドレスを着せる。
ピンクを基調としたモスリンたっぷりのドレスで、肩はガバッと開いていて、剥き出しの肩が寒そうだった。

「ねぇ、メイリン・・・これって舞踏会とか、夜会用のドレスじゃない?肩が開き過ぎで、ランチを頂くのは、些かはしたないんじゃ・・・」
「シルバーさんのご命令ですよ。ランチだけでなく、夜会までいることになってはいけないとの事ですので・・・」
シエルはシルバーの配慮に苦笑する。
シエルがヴァンパイアの本拠地へ乗り込む、本当の目的を助けるつもりなんだろう。
メイリンが仕上げて行くシエルのドレス姿。
それが、通常の舞踏会や夜会ならどれ程、良い事か・・・
「さぁ、お嬢様。お綺麗に仕上がりましたよ」
鏡に映るシエルは、16歳の美しい少女だった。
階下へ降り、食堂で使用人達に囲まれ、父と朝食を取る。
そんないつもと変わらぬ日常・・・
ヴァンパイアの城へ行けば、生きて帰ってこれるのか・・・
シエルがグルグル考えていると父が声を掛けてきた。
「シエル、もし辛いなら、お前が犠牲になる事はないのだよ。どこぞの貴族の子息にお前をくれてやるのは、辛いのだが、ヴァンパイアを倒す為とは言え、自ら死地へ赴く事などない。ミカエリス公爵は殺せないにしても、他の奴らは朝は眠っているのだ。我が部下達の軍事力を持ってすれば、全てのヴァンパイアも死滅出来るだろう」
父は精一杯シエルを説得する。
自分の家業を女のシエルに継がせるのも、不本意なのだ。
今では、二人だけなのだから・・・
「いいえ、お父様。彼とはゲームをしていますもの。ここで逃げてしまえば、どんな報復を受ける事か・・・私は大丈夫ですよ。それに、シルバーも一緒に行ってくれますし」
シエルは自分に出来る精一杯の言葉で、父に笑顔を向けた。
「お嬢様、ミカエリス公爵からのお手紙が・・・」
シルバーがシエルに約束の手紙を渡した。
「あいつ意外に几帳面なんだ・・・迎えを寄こす様よ・・・A10に迎えの馬車が来るって・・・まぁ、絶対逃げるな!って事でしょうけど・・・」
楽しくて仕方ないと言うシエルの笑顔に、誰も何も言えない。
時期主は、頑固で素直でなくて、しかし、反面、無邪気でくったくなくて、愛らしい少女だったから・・・
「旦那様、私がこの命に代えても、お嬢様は必ずお守り致します。ですから、ご安心下さい」シルバーは、自分を引き取り、きちんとした教育を受けさせてくれ、シエルの兄同然に扱ってくれたファントムハイヴ伯爵への恩に報いる為、命を捨てても、シエルを守るつもりなのだ。
最もそう育てられた・・・
 「もう、シルバーったら、命を粗末にはしないで・・・私だって一応ハンターなんだからね」
プウッと顔を膨らませているシエル。
ハハハ・・・フフフ・・・食堂は笑顔と笑い声が絶えなかった・・・
約束のA10はすぐだった。
馬車が来て、二人が乗り込むとガラガラと馬車が走り出す。
「シエル・・・危なくなったら合図を送るんだよ。何処にいたって必ず助け出す・・・」
父の決意だ。
「行ってきますお父様、必ず生きて戻ります」
不安を胸に抱き、シエルはシルバーと出発していた。
父も使用人達も、馬車が見えなくなるまで、見送る。
「お嬢様、必ず御戻りになって下さいね。」
祈るしかないメイリンだった。
暫くたち、途端にガクンと嫌な動きをした馬車に怪訝そうな二人は、奇妙な感覚に囚われた。
それもその筈、馬車は、宙に浮いていたのだ。
しかも、迎えの馬車の馬二頭の背から生えているのは、紛れもなく白い翼・・・
バサッバサッと羽音が響くが、馬車は滑らかに宙を進んで行く。
この先、どんな運命が二人を待ち受けているのだろうか?


「ようこそ、ミカエリス公爵家へ」
馬車が目的の地に降り立ち、執事を伴ったセバスチャン・ミカエリスが、シエルに手を差し出す。
「公爵お招き頂きありがとうございます。まさか、空中遊泳などと言う、貴重な体験をさせて頂くとは、想いませんでしたわ」
出会った時と同じような、嫌味の応酬・・・
セバスチャンにエスコートされ、屋敷に一歩踏み出した。
「母は色々研究をする方でしてね、あの馬は母が偶然作りだしたモノ。それ故、父に見染められたのでしょうけど・・・」
「科学者でらっしゃったのかしら?貴方のお母様はさぞ、お綺麗な方だったんでしょうね。貴方がヴァンパイアでなければ、こうしてお会いする事もなかったでしょうに・・・」
シエルの言葉は曖昧だった。
セバスチャンがヴァンパイアだったから、こうして会う事が可能だったのだ。
優雅にセバスチャンにエスコートされ、楽しげに会話する様は、まるで恋人同士だった。
シルバーの気持ちも知らずに・・・
 食堂に案内され、優雅に食事が始まる。
 シルバーはシエルの執事として同行していたが、この城には、自分だけしかいないからと言う理由で、食卓に付かされた。
 カボチャのポタージュから始まり、季節の野菜サラダ、メインの牛ヒレ肉とかも、最高の食材を使用され、最高のサービスで、最高の味・・・一流ホテルのシェフの自信作かと想わせる程の美味しさに、シエルは目的を忘れそうになってしまう。
 最もそれがヴァンパイアの手管だと解ってはいるが・・・
 「ご満足頂けましたか?」
 セバスチャンは食後のスイーツをシエルと共に取り、にこやかに微笑みかける。
 普通の女性なら、心を蕩かされそうな甘い甘い声音で・・・
 「ええ・・・ヴァンパイアの貴方にここまで、繊細な配慮をされると、つい心を許しそうになるから恐ろしいわね。でも何故、貴方しかいないの?一緒にいた子とかは今は眠っている訳?」
 「ええ・・・彼は私と違い純血種・・・一族に忌み嫌われる私と違ってね。最も、私は彼らにとって最早、不要の存在・・・生かしておいてくれるだけ感謝していますよ」
 そう純血種にとって異種間の子など、邪魔な存在。
 しかも、ダンピールには稀に、純血種を凌ぐ能力の持ち主も現れる事もある。
 「さぁ・・・そんな事より私とダンスを踊って頂けませんか?食後の腹ごなしにもなりましょう」
 シエルは、セバスチャンに差し出される手を取った。
 広々とした食堂で、優雅に踊る二人に、シルバーは驚きと動揺を隠せない。
 二人は一対の絵の様に、お互いを引き立て、引け目を感じる事のない芸術品の様に、美しかった。
 クルクル回りながら時には密着し、ヒソヒソと会話を交わす。
 まるで、前世からの恋人同士の様に・・・
 ひときわ密着するとシエルは、セバスチャンの耳元で囁いた・・・
 「今夜、私の部屋へ・・・」
 セバスチャンの口元が弧を描く。
 楽しい時間は過ぎ、二人は無事に家路に着いた。
 シエルの父は悦び、いつもの様に夕食を取った。
 
 「フフ・・・無邪気なモノだ・・・やはり貴方も普通の女・・・」
 就寝の支度を終え、眠りに着いた深夜0時・・・
 セバスチャンはシエルの首筋めがけ、顔を近づけた。
 「どっちが油断しているのでしょうね?」
 セバスチャンの喉元には、シエルがナイフを宛がっていた。